特集

江戸川をつくる人 第1回

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江戸川区は南北に広がる地形に、水と緑の恵みが点在する人口69万人の地域だ。その最北部に位置する北小岩地区は、弥生時代後期から集落が存在したとされ、「甲和の里」と名付けられている。現在に至るまで、土偶や食器などの上小岩遺跡が発掘されたり、数々の著名人・作家を輩出したりするなど独自の良さを誇る。

特集「江戸川を作る人」第1回は、そんな北小岩4丁目にある地域密着型、天然酵母のパン店「こやなぎパン工房 月とかえる」店主の小栁君代さんにインタビュー。積極的に地域と関わる「月とかえる」を通じて見えてくる、北小岩の良さについて聞いた。

―「月とかえる」では江戸川区にちなんだ材料もパンに取り入れていますね?

 私自身が小岩に生まれ、小岩で育ち、小岩で店をやっているので、地元のものを使って地域を盛り上げたいという思いから取り入れています。区名産の小松菜や、近所の家で取れた無農薬夏ミカンを使って、(一緒に切り盛りする)母が手作りしたマーマレードパンもあります。

―なるほど。子どもたちにも江戸川区で取れる農作物が分かりやすく伝わりますね。店内にはそれ以外にも、地域との関わりを感じるものがいろいろありますね。特に斉藤洋さんの児童書やサインなどがたくさんありますが…。

 2016(平成28)年に北小岩の有志で結成された「ルドルフ応援団」に加入して、この地域を盛り上げる活動をしています。北小岩が舞台になっている「ルドルフとイッパイアッテナ」に感銘を受けたからです。映画は2016年に公開されましたが、実はそれまで作品については知らなくて…。映画をきっかけに、すっかり原作者の斉藤洋さんのファンになり、そろえた著書はお客さまへ貸し出しもしています。

―ルドルフ応援団はどのような活動をしているのですか?

 作品を通じて、この北小岩の良さを知ってほしいと思っているメンバーが集まり、活動しています。映画には近隣の名所や魅力もたくさん出てきます。応援団は年に数回、近隣でマルシェを開いたり、区内のイベントにも参加したりして、作品と北小岩の良さを、楽しみながら伝えていっています。

―文学を通して地元の良さを発信するのはとてもいいですね。店には、斉藤洋さんが直々に命名したパンもあるとのことで…。

 はい。ルドルフメロンパンです。応援団の活動を知った先生が実際に来店されて、命名してくださいました。その他に、先生公認の「ココア塩メロンパン」もあります。

―ココア塩メロンパンは猫の手と尻尾に見えますね。

 メロンパンが黒猫のルドルフ、こちらはトラ猫のイッパイアッテナを表現しています。

―商品をきっかけに作品も知ってもらえたらという思いが?

 そうですね。小さな子どもたちにも喜んでもらえたらという気持ちと、作品を通じて小岩地域の良さも知ってもらえたらうれしいなという気持ちもあります。

―自分の生まれ育った土地の良さを広めていきたい、そんな気持ちが伝わってくるすてきなエピソードの数々ですね。これから先、「こんな店にしていきたい」というビジョンなどはありますか?

 私たちの住む北小岩に、すてきな物語があることを知ってもらえるきっかけになればうれしいです。地域の皆さんと関わって盛り上げていけたらいいなと思います。

 

―改めて北小岩の魅力を再確認しました。ありがとうございました。

 「月とかえる」は2006(平成18)年にオープン、2012(平成24)年以降は木曜・金曜の週2日、店舗営業を行うほか、冷凍常備パンの通販も同時に行っている。パンは全て無添加素材と天然酵母を使い、店主の小栁君代さんが一人で製造している。販売やアシスタントで小栁さんの母親も一緒に働いている。

営業は木曜・金曜の10時~18時。冷凍常備パンは24時間受け付け(店頭除く)。

こやなぎパン工房 月とかえる | 冷凍常備パンで、いつもパンのある生活を。 (tsukitokaeru.com)

 

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