
アメリカ人写真家Paule Saviano(ポーレ・サヴィアーノ)さんが、東京大空襲の被災者、広島・長崎の原爆被爆者、第二次世界大戦下での欧州での爆撃生存者を撮影したポートレート写真展示「From Above」が3月8日、The East End Gallery(江戸川区東小岩5)で始まった。
3月8日初日、エイドリアン・フランシス映画監督も展示会に駆け付けた
ニューヨーク在住のポーレさんは12歳で写真を撮り始め、ファッション、音楽アーティストから風景までさまざまな被写体を撮影し、世界各国の雑誌などで発表している。
近年はテーマごとのポートレート撮影に専念し、2008(平成20)年からは、日本の被災者たちの肖像を撮り続ける同プロジェクトに取り組んでいる。「From Above」は日本語で「上空より」を意味し、今回は新たに、2022年にウクライナで撮影した10代の若者たちの肖像作品も展示する。
ポーレさんは2時間かけて取材・撮影を行い、一人一人と向き合う。前半90分は被災者の気持ちに寄り添い「戦争に巻き込まれたその時、何が起きたのか」「その後どう生きてきたか」という2つの質問を投げかけるのみにとどめ、生存者の回想に耳を傾ける。撮影された人たちは、不思議と目線を上に、上空を眺めるような表情になるという。
戦後80年という時を迎え、東京で開く同展。築90年の木造ギャラリーを開催場所に選んだ理由について、「それぞれの個性、正直さをまとうポートレート写真は、こうした個性のある蔵のような場所に飾る方がニュアンスや雰囲気が伝わりやすいと感じたから」と話す。
初日は、みぞれ降る天候の中、多くの人々が会場に足を運んだ。その中には、現在上映中の映画「ペーパーシティ 東京大空襲の記憶」のエイドリアン・フランシス監督の姿も見られた。フランシス監督も東京大空襲のドキュメンタリー映画を手がけており、同プロジェクトでポーレさんが撮影した被災者も作品の中に登場する。
ポーレさんは「被災者たちが肖像画を撮らせてくれたことは、じっくり話を聞いて向き合うことによって、自分を信頼してくれたからなのでは。そうだとすれば、彼らが戦時下に経験したことを、責任を持って伝えていかなければいけない」と話す。
開場時間は13時~21時(木曜は16時30分開場、金曜・土曜は22時まで)。入場無料。今月16日まで、ポーレさんが在廊する日あり。4月6日まで。