特集「江戸川をつくる人」の第5回は、江戸川区東葛西で創業約50年、国産の粘土「モンモリロナイト」を扱い続けてきたクレイ専門のスキンケア製品製造会社「粘土科学研究所」社長を務め、その直営ブランド店を運営する「KURUMU」の社長も務める手塚 平さんに話を聞いた。手塚さんは、2025年で7回目を迎えた「えどがわ楽市」の代表としても地域をけん引している。今回の特集では、前編で同社のこれまでの歩みと独自の経営視点について紹介。後編で、区内外から多くの人が集まる「えどがわ楽市」について紹介する。


-創業から約50年とお聞きしました。まずは会社の成り立ちについて教えてください。
私の祖父が創業し、母が継ぎ、私で3代目になります。会社の創業と私が生まれたのがちょうど1年違いなので、私自身も会社と共に年齢を重ねてきました。祖父は理系の人間で、自称「町の科学者」のような人でした。起業家精神が旺盛で、いくつもの特許を取得し、トライ&エラーを繰り返す中で辿り着いたものが、国産の「モンモリロナイト」という粘土だったと聞きました。

-50年前というと、「粘土」を美容に使う文化は浸透していなかったのではないでしょうか。
当時は「粘土を顔に塗るなんて」と驚かれる時代で、クレイという言葉自体も浸透していませんでした。ただ、祖父の家には常に研究中の粘土があり、私は子どもの頃から、あせもができたり蚊に刺されたりすると、当たり前のようにクレイのチューブを塗ってもらっていました。夏休みの自由研究で「界面活性剤フリーの化粧品」を作ったこともあります。当時は詳しい効能までは理解していませんでしたが、生活の一部でしたね。

-そこから自然と家業へ進まれたのですか?
若い頃は、反抗期特有の視点から「本当にこの粘土は良いものなのか、良いとしたらなぜ」と疑問や否定の目でクレイを見ていた頃がありました。そこで、一度客観的なデータや実証が必要だと考え、自分で資料を集めて猛勉強し、記事を書いて発信したりもしましたね。そうして客観的に検証を重ねるうちに、「やはりこれはいいものだ」と確信を持てるようになりました。それと同時に、専門的で難しいこの素材を、もっとポップに伝達するにはどうすればいいか、という自分のミッションがおぼろげながら見えてきました。


-「ポップに伝える」。その発想には、手塚さんのユニークな経歴が関わっているそうですね。
実は以前、エンターテインメントの世界でラッパーとして活動していました。音楽と粘土、全く違う世界に見えますが、「自分をどう売るか」「人と違うことでどう爪痕を残すか」という戦略の立て方は共通しています。当時、バスケットボールをやっていた仲間とグループを組み、あえてバスケのユニホームでステージに立ったり、女性ファンを獲得するために歌詞やライブ中のパフォーマンスを徹底的に計算したりしていました。

-その「戦略的思考」が、現在のブランド「KURUMU」に生きているのですね。
はい。30歳くらいの時に、人生の師匠とも呼べるブランディングの専門家・宇佐美清さんと出会い、立ち上げたのが「KURUMU」です。宇佐美さんは理容師である義理の母の紹介で出会ったのですが、誰もが知る大手企業の商品キャッチコピーを手がけてきた方です。ブランドの制作には、デザイナーやコピーライターを含めて隔週頻度で集まり、チームみんなで議論しながら作り上げていきました。音楽をやっていた時の「自分たちで価値を作る」という感覚を、プロフェッショナルな方々に背中を押してもらいながら形にできた経験は、今の財産になっています。
-多くのクリエーターとの出会いが、商品を広めるきっかけになったとか。
そうですね。クレイをテーマにしたヨガと音楽の野外フェス「クレイトピア」で共に活動する活動作家のアメミヤユウさんや、外箱のデザインを手がけてくれたアートディレクターの永戸鉄也さんなど、感性の鋭い方々との出会いは大きかったです。実は、ある百貨店に卸していた「モンモリロナイトの歯磨き」が返品になってしまい、在庫を抱えたことがありました。それを個人的に欲しいという方に配ったところ、評判が広がり、BEAMSの方などの手に渡り、アート分野で活躍するさまざまな人へつながっていきました。「商品が人をつないでくれた」という感覚ですね。



-最後に、手塚さんが伝えたい「モンモリロナイト」の魅力とは何でしょうか。
一言で言えば「やさしさ」と「万能さ」です。洗顔、パック、入浴剤、歯磨きまで、粘土一つで何でもできます。地面から取れる天然の素材なので刺激が少なく、小さなお子さまでも安心して使えます。かつて私が客観的なデータを求めたように、お客さまに対しても機能や値段を誠実に発信し、納得して選んでいただきたい。そのために、「モンモリロナイトとは何か」を研ぎ澄ませ、イラストを使ったり、SEO対策で記事を書いたりと、これからもポップに伝え続けていきたいですね。

-手塚さん、貴重な話をありがとうございました。(後編へ続く)
〇KURUMU
〇粘土科学研究所
東京都江戸川区東葛西6-9-9
営業時間は 9時~18時。